151系車両解説1
<はじめに>
国鉄特急型電車の始祖となった151系電車(当初はモハ20系)の車両について、製造予算区分ごとに「製造時の特徴」を解説し、続いて「改造」について工事施工時期順に解説する。
なお、各車の主要諸元・履歴については【データ】「151系・161系・181系主要諸元表」「151系・161系・181系全履歴」をご参照願いたい。
<製造時の特徴>
【昭和33年度本予算】
1.形式および編成
形式は、製造開始当時、急増が予想される電車の形式称号を一部変更することが検討されており、50系を予定して製造が進んだが、改正が遅れ(1959年6月改正)、空番の20系が割り当てられ、モハ20・モハシ21・クハ26・サロ25の4形式が誕生した。
編成はクハ+モハ+モハシ+サロの4両で一組を組成、これを背中合わせに連結した8両編成とした。2等車(当時)をビュフェではさむ事により、3等客が2等車内を通り抜ける事がないように配慮されているのは当時の優等列車の基本であったと言える。
| ←大阪 |
編成番号 |
@ |
A |
B |
C |
D |
E |
F |
G |
編成番号 |
東京→ | |
| 川車 | B2 | 26002 | 20002 | 21002 | 25002 | 25001 | 21001 | 20001 | 26001 | B1 | 川車 | |
| 近車 | B4 | 26004 | 20004 | 21004 | 25004 | 25003 | 21003 | 20003 | 26003 | B3 | 近車 | |
| 汽車 | B6 | 26006 | 20006 | 21006 | 25006 | 25005 | 21005 | 20005 | 26005 | B5 | 汽車 |
編成定員は2等104名、3等320名の計424名、1編成が東京〜大阪間を一日一往復、予備編成を含め3編成をそれぞれ、川崎車両梶A近畿車輛梶A汽車製造鰍ェ受注、各形式6両ずつの24両が1958年9月に落成した。(以後メーカー名はそれぞれ、川車、近車、汽車と略称する)
2.車体構造
車体はナハ10形にはじまる、セミモノコック構造を採用、外板に1.6mm、屋根板に1.2mm厚の冷間圧延鋼板を使用した溶接組み立て車体である。断面は回転腰掛を回転させる際の最大幅となる肘掛け部分の車体幅を2946mm幅とした曲面構成とし、第一種縮小車両限界に収める為に、腰板部分を3000mmRで絞り、側窓から上の側板は内側に2゜傾斜させた独特の形状となっている。 また、特急用車両であることから定員乗車を前提として屋根高さは3350mmに抑え、走行抵抗の軽減と低重心化が図られている。

モハ20系の車体断面図 長距離高速電車説明書より
鋼体内側には石綿を吹き付けると共にグラスファイバーを張り、防音と断熱を図っている。車体長は、クハ26が先頭部分の機械室と客室定員との兼ね合いから20000mmに収めることが出来ず、先頭部分を絞ることで21000mmまで延長したが、他車は20000mmである。モハ20形の自重は冷房装置を搭載したにもかかわらず約38tと、モハ80300番台と比べて7tもの軽量化を実現している。

モハ20系の防音・断熱材 長距離高速電車説明書より
電車列車に対する防音の徹底については、<誕生のいきさつ>で述べたごとく、特急形電車開発に際しての最重要課題であった。大きな騒音源である電動発電機と空気圧縮機は、先頭車の機械室(ボンネット)部分に集約することで、物理的に客室との距離を置くことに成功したが、主電動機や走行振動の遮断についてはあらゆる角度から検討が加えられることとなった。
主電動機や台車から発生する音や振動を遮断する方法として、日本鉄道技術協会の中に設けられた「車両防音委員会」による提言をもとに、放送局スタジオの浮床構造を鉄道車両に応用する事が検討され、各車両メーカーで試作が行われた結果、最終的には「汽車」から提案された浮床構造の採用が決まった。構造は図のように、キーストンプレートの谷の部分に長手方向の防振ゴム8本を接着、このゴム上部に根太をはめ込み、15mm厚の耐水合板を根太に固定、その上に12mm厚のコルク板を張り、更に3mm厚の塩化ビニール敷物を張るというものであった。また、キーストンプレートと床板との間にはグラスファイバーを敷き詰め、電動車の車内点検口を廃止し床下からの音・振動の遮断に一層の配慮がなされた。なお、防音効果比較のためモハ20形とクハ26形の奇数番号車は、キーストンプレートと床板を根太で直接固定する従来と同じ固定床としたほか、浮床構造の車両についても出入台やビュフェ部分など客室以外の床は構造上固定床としている。

側窓は空調完備を前提とした固定窓とし、外側5mm厚の熱線吸収ミガキガラスと、内側5mm厚の透明ミガキガラスの間に6mm幅の乾燥空気層を封入した複層ガラスが採用された。複層ガラスは遮音効果も期待されたが、むしろ断熱効果が大きく、試験において太陽熱の5割強をカットすることが確認されている。この固定窓は同時期に製造されたナハ20系固定編成客車と近畿日本鉄道10000系ビスタカーにも採用され、以後の冷房付き特急用車両の標準となっていく。しかし、晩年は窓ガラスの押えゴムの劣化等により、複層ガラスの中間空気層の気密が保てず、結露を生じた車両が多く見られたのは残念であった。

複層固定窓ガラス構造見取り図
また、出入台が1ヶ所であることから、乗務員室を有するクハ26を除いた各車について、出入台の反対側の客室最前位窓を非常用として下降可能な構造とした。通常は窓ガラスと押さえ枠の間に設けたゴムチューブに空気を入れることで、窓ガラスを押さえ枠に押しつけて固定、更に機械的にロックしておくが、非常時にはこの空気を抜き、ロックを外すことで窓が下降し、ここから脱出できるようになっている。これは、1951年に起きた桜木町事故の教訓から、窓からの脱出が考慮された結果である。余談ではあるが、1959年7月に行われた高速度試験において、風圧測定のためのピトー管を取り付ける際にこの下降窓が大いに役立ったことはあまり知られていない。
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左:モハ181-3非常脱出窓外観 窓上部にアルミの窓枠が見えている。 中央:モハ181-3非常脱出窓内部 この部分の内帯構造が変わっている。窓右横の箱状のものが下降用ハンドルボックス。 右:サロ181-2の下降用ハンドルボックス 「箱の中のハンドルを引けばこの窓が下に落ちます」という案内表示が付いている。

高速度試験では非常用窓の上部が測定用のピトー管設置に利用された
客用扉は700mm幅の引戸で片側一ヶ所、戸閉機械は小型軽量で直動式のTK100を開発しこれを取り付けている。
屋根は、塩化ビニール絶縁屋根布の表面に熱線反射加工としてアルミ粉末を蒸着させ、ポリエステルコーティングした特殊な屋根布を使用し、塗装の省略が行われている。この屋根布は当時の女性用の草履からヒントを得たと言われているが、今ならさしあたり銀ラメのポーチあたりがそれにあたるのではないだろうか。
屋根上にはAU11形冷房装置を6基(クハ26は5基)搭載し、2基を一組(モハシ21とクハ26の一部は1基)にして、俗に「キノコ形」と呼ばれる通風器兼用の軽合金製カバーを取り付けている。この空調装置は、それまでの車両用大型冷房装置の概念を変え、家庭用のウィンドウ形クーラーを車両用に応用改良した画期的な分散型の冷房装置で、開発には東京芝浦電気鰍ェあたり、ユニットクーラーと名付けられた。(以後東芝と略称)
以後の特急電車、特急気動車といえばこの形が思い浮かぶほどのデザイン。サロ181-6のAU11である。
防音と走行抵抗減少および外観上の美しさを考慮し外幌が設けられたが、これまで連接車を除いては曲線走行時に車体間に生じる偏倚が大きく、外幌を取り付けることは難しいと考えられていただけに、構造・材質には慎重な検討が加えられた。その結果、ネオプレンゴムの内部にナイロンコードを入れ、外傷を受けた際にもそこから傷が拡大することを防止する対策を施し、ひだの無い非常に滑らかな外幌が誕生した。このため、検査標入れは車体側面下部に取り付けられている。また、貫通路部分の内幌についても外幌と同様の材質で、幌枠はアルミ合金製の押出形材を使い軽量化を図っている。連結器はクハ26の先頭部分を除き密着連結器を使用し、緩衝装置は油圧緩衝器を使用している。
車体外部色はクリーム4号をベースに、窓廻り・雨ドイ・車体裾を赤2号に塗り分けたスマートなもので、以後長きにわたって親しまれる国鉄特急色の始祖となっている。塗料はフタル酸樹脂エナメルが使われている。窓廻りの赤2号はクハ26の乗務員室扉から先頭部分ライトケース側面に引かれた4本の赤2号帯に向けて、60゜の角度で落とし込み、運転台中央ピラーの後退角、ボンネット開口部のラインと角度を合わせる配慮がなされている。
オリジナルのモハ20系8両編成下り「第1こだま」。
画像提供:辻阪 昭浩様屋根は先に述べたごとく、銀色の特殊な屋根布を張っているため無塗装、ユニットクーラーキセほかの屋根上機器は銀色のアルミエナメル塗料で塗装されている。
床下機器および台車は、国鉄電車として初めて灰色2号に塗られ、高速列車に相応しい軽快さを生み出すと共に、傷の早期発見というメリットもあったが、保守現場からの猛反対を受け、入場時に黒色に塗り替えられてしまった。
ナンバーは特急に相応しくステンレスの切り抜き文字が採用されたが、前述のように形式称号規程改正が確実であったことから、別製の鋼板に取り付けたものを車体にネジ止めする方式がとられた。

当初取り付けられた切り抜き文字。鋼板に取り付けた上で鋼板を車体にネジ止めしていた。
所蔵:交通博物館