151系車両解説3


  国鉄特急型電車の始祖となった151系電車(当初はモハ20系)の車両について、製造予算区分ごとに「製造時の特徴」を解説し、続いて「改造」について工事施工時期順に解説する。
なお、各車の主要諸元・履歴については【
データ】「151系・161系・181系主要諸元表151系・161系・181系全履歴」をご参照願いたい。
 

形式別詳細

1.モハ20

 パンタグラフ付き3等中間電動車で定員68名、前位に乗務員室と物置があり、物置下部はくず物入れになっていて、腰板部分にシャッターが設けられている。後位には出入台と和式便所・洗面所がある。
 屋根上にはPS16A形パンタグラフとLA13形避雷器が2組、その間には2基のAU11形ユニットクーラーをカバーした冷房装置が3組取り付けられている。
 床下にはCS12A形主制御器、MR15形主抵抗器、MR24形減流抵抗器、IC2-MR21形誘導分流器、CB12・CB13形遮断器、予備励磁装置、積算電力計など電気機器が所狭しと取り付けられている。その他にC1B形ブレーキ制御装置、700リットル水タンク、80リットル飲料水タンクが取り付けられている。



2.モハシ21

 モハ20とユニットを組む3等ビュフェ合造中間電動車で定員36名、車体中央部に出入台を持ち、前位に和式便所と物置があり、出入台の前位寄りが客室となっている。後位寄りはビュフェと呼ばれる立食方式の軽食堂である。「軽食堂」あるいは「簡易食堂」の呼び名では安っぽいとの考えから「BUFFET」をそのまま仮名読みにした「ビュフェ」が採用された。
 ビュフェは中央にカウンターを設け、カウンターの反対側窓下にもカウンターテーブルを取付け、外を眺められるような立食スペースとなっている。この部分の窓は下端を床面から1080mmの高さにして、立った位置からの眺望が考慮されている。
 中央カウンターの内側は調理室で、大型電気冷蔵庫、大型冷水器、ジュースクーラー、アイスクリームストッカ、電気コンロ、サイフォン式コーヒー沸かし器、トースター等の電気機器が並んでいる。この部分は下端を床面から1305mm高さとした1230mm×315mmの小窓が3枚設けられている。当初の計画ではコーヒーショップをイメージし、エスプレッソコーヒーマシンやソフトクリームフリーザーを用意する予定であったが、アルコール提供も考慮せねばならず、最終的には上記の調理設備に変更となった。

モハシ21004のビュフェ内部。右端には新たに考案された酒燗用の箱が見える。
中央の大型冷水器の上には花瓶と花がしつらえられ、特急のステータスの高さが伺える。
画像提供:辻阪 昭浩様

 ビュフェの出入り台寄りにはペダル式の手洗器と初めての試みである「エアタオル」、そしてスピード感を味わえるように大型の速度計が設けられている。エアタオルはドライヤーにヒントを得たもので、松下電気産業鰍ェ担当、最初のものは角形であった。「エアタオル」というのは造語であるが、当時の利用客には物珍しい設備として受け入れられたようである。

スピードメーターとエアタオル。新幹線まで受け継がれることになるビュフェの定番アイテムである。ここにも花瓶と花が有る。
画像提供:辻阪 昭浩様

 後位には将来の列車電話サービスに備えて、電話室と電話乗務員室が設けられているほか、壁には電池式の掛け時計も設置された。また、食堂の物資積卸用として750mm幅の業務用開き戸が設けられている。屋根上は中央に出入り台を設けた関係で、ユニットクーラー2基をカバーした冷房装置を2組取付け、その両側に1基をカバーした冷房装置を取り付けた変則配置になっている。また、出入台上部と後位寄り車端部分には、列車電話用の準備工事として円形アンテナが左右2基ずつ計4基設けられている。床下は制御電源用整流装置等の補助機器のみで、C1B形ブレーキ制御装置等のブレーキ機器が主体である。このほか列車電話用の無線電源用自動電圧調整装置の取付け準備工事が行われている。水タンクは食堂での使用に対応するため、950リットル1個、550リットル2個が取り付けられている。



3.クハ26

機械室と高運転台を有する3等制御車で定員は56名、前位にはのちにボンネットと呼ばれるようになる機械室および車体上部にドーム状に突き出した運転台があり、その下に開き戸の乗務員室扉がある。また乗務員室扉脇には屋根に上るためのアルミ製梯子がかけられるようになっており、梯子は乗務員室内に格納されている。後位には出入台と和式便所・洗面所が設けられている。
 ボンネット内部にはMH93-DM55形3相60Hz440Vの150kVA電動発電機と、MH92-C3000A形空気圧縮機が設けられ、4両分の供給を行っている。ボンネットは、機器の点検および交換が行えるように大きく取り外せる構造になっており、先端部には逆三角形の砲金製特急シンボルマークが取り付けられ、上面にはクレーン用のフック兼足掛けステップが設けてある。この特急シンボルマークであるが、汽車会社製のクハ26005・006のみがやや低い位置に取り付けられ、他社製の4両と異なっている。

  

取付高さの異なるシンボルマーク。左が汽車会社製クハ181−5(クハ26005)、右が近畿車輛製クハ181-11(クハ151-11)。

 ボンネットの前面には20W蛍光灯4本で照明された列車愛称銘板が取り付けられている。左右には250Wの前灯と標識灯が縦に配置され、ボンネットの絞りよりもやや緩く絞られたケーシングでまとめられている。この前灯には非常時の後方列車防護を目的とした交互点滅回路が設定され、列車最後部となる際には運転室入口脇に格納された赤色フィルターを装着する。乗務員室の2位側仕切部にはこのフィルターを格納固定しておく3本爪の掛け具が設けられている。

  

最後部になる場合に取付が義務づけられた赤色フィルター。左は被せた状態、右は乗務員室内に格納した状態。
画像提供:辻阪 昭浩様

 ライトのケーシングの下部にはボンネット内部に外気を取り入れるグリルが片側1ヶ所ずつ設けられている。先頭部の連結器は通常は設けず、カバーが付けられている。ただ、非常時においては、運転室に格納した簡易連結器を装着、8両編成列車を25‰勾配から引き出せる構造としている。また先頭部台枠下にはスカートを設け、内側には3本の電気笛と2本の空気笛を装着、この部分のスカートには長円形の穴を開け、網を張っている。

ボンネットに外気を導入するグリルは、最初の6両のみ片側一ヶ所であった。クハ181-5(クハ26005)のもの。


 運転室は客室床面よりも1220mm高いドーム状の高運転台で、前面窓は側面まで回り込んだパノラミックウィンドウの2枚構成で、中央にはステンレス製のピラーを設け鼻筋を通した形状となっている。側面窓は引き違いの横引き窓で、前面窓との接合部分は曲線で構成されているが、近車製の車だけここが直線処理になっている。

前面窓との接合部分(矢印)が、直線処理の近畿車輛製クハ181-3(クハ26003)。


こちらは標準の曲線処理、汽車会社製クハ181-5(クハ26005)。

 後方監視用に背後にも手動ワイパー付きの窓が設けられ、ここからモハのパンタグラフの状況等が確認できる。運転室内部は3段の階段を中央に配し、左側に運転席、右側に助士席が設けられ、運転士席マスコンの奧には電気式速度計、助士席には油圧記録式速度計を設け、天井には小型の扇風機を2台取り付けている。

スピードメーターが110km/hを示すクハ151の運転台。
画像提供:辻阪 昭浩様

助士席側に設けられた記録器速度計。

 運転室屋根上中央には150Wの砲弾型前灯、その両脇には青色のウィンカーランプが設けられた。ウィンカーランプは、当時のアメリカの長距離バスに使われていたものからヒントを得たようで、始発駅構内入線時や主要駅の通過時の注意喚起に使われたようである。
 運転室側窓の横には可倒式のバックミラーが左右に設けられ、構内での入換に際して、運転台から身を乗り出す必要がないように考慮されていた。設計者の星氏からは「初めてドーム状の高運転台を採用したために、推進運転の際に身を乗り出す事が難しいと考え、構内での入換えや工場内での推進運転時に後方監視が容易なようにバックミラーを取付けた。これはスイスを訪れた際に支線区用の軽量電車に折り畳み式のバックミラーが取り付けられていたところからヒントを得たものだ。」と伺っている。つまり営業運転中は使わない想定であり、最初の6両はロッドによるリモートコントロールにより、ミラーを車体に沿わせて寝かせる事が可能な構造であった。

最初の6両にのみ採用された可倒式のバックミラー構造概略図。ロッドでコントロールする構造だった。
(マウスを画像の上に載せると、折り畳んだ状態が表示されます。)

 バックミラーに映る阪急デイ100をチラリと一瞥、負けじとマスコンを握りグイグイと引き離して行く…そんな使われ方も想像してしまうが、設計者の思いとは裏腹に、現場では目視・指差が当たり前の風土の上に、自家用車もまだ普及していない時代、バックミラー自体にほとんど馴染みがない環境下ではあまり利用されなかったと聞く。運転士は皆、器用に引き違いの窓から身を乗りだして151系の長大編成を操っていたのである。
 屋根上の冷房装置は前位の1基のみ運転室と一体になったカバーに収められ、あとは2基ずつカバーされた標準タイプが2組配置されている。
 床下にはMG起動装置、起動抵抗器とC2ブレーキ制御装置、700リットル水タンク、80リットル飲料水タンクが設けられている。前位の台車は機械室の重量を考慮し、軸バネを電動車と同じものとしているほか、乗務員室扉下のステップを省略したために1位側はオイルダンパの上受部分に、2位側はボルスターアンカの上にそれぞれステーを設けている。

クハ181-3(クハ26003)のTR58Z台車。オイルダンパの上部(矢印)にステーが取り付けられている。

2位側のボルスタアンカ上部に取り付けられた昇降用のステー。
画像は川崎重工に保存中のクハ181-1(クハ26001)のもので、許可を得て撮影したものである。



4.サロ25

2等付随車で、定員は52名である。前位に洋式便所と洗面所、後位に出入台と回送運転台が設けられている。出入台には車掌スイッチ(通称「『他』『これ』スイッチ」)が取り付けられている。当初、列車最後尾に車掌は乗っておらず、サロ25の車掌スイッチの「他」を閉じ、確認ののち、「これ」を閉じて自車の扉を閉めていた。
 回送運転台は45km/hの速度で運転が可能で、屋根上には150W砲弾型前灯が設けられ、妻面には窓とワイパー、後部標識灯が取り付けられている。

サロ181-2(サロ25002)の車掌スイッチ。後年ここでの戸閉め操作は行わなくなったため「使用停止」の注意書きがある。

 客室内の後位寄りには専務車掌室と2名分のビジネスデスクを備えている。客室とは型ガラスのパーティションで仕切られた一画に、2名分の事務机を設置、さらに個々の机を乳白色の樹脂製板で仕切り、各机には10Wの蛍光灯スタンドと回転式事務用椅子が置かれていた。客室とのパーティション上部には「ビジネスデスク」の表示と「お仕事の整理にどうぞ」という案内がアクリル板彫込みで取り付けられていたが、設計者の星氏も「当時2等車の乗客は社長や重役が多く列車内で仕事をする立場の人は少なかったのではないだろうか。」と語っておられる。ただ、「特急にっぽん」というコメディ映画には、編集者に原稿を催促された作家が仕方なくビジネスデスクで執筆するシーンがあり、ひょっとするとそんな利用者が居たかも知れないと妙に納得させられるものがあった。

  

型ガラスのパーティションで仕切られたサロ181-3(サロ25003)のビジネスデスクと案内板。

 屋根上にはモハ20と同様、2基のAU11形ユニットクーラーをカバーした冷房装置が3組取り付けられている。後位の車掌室上部にはラジオ聴取のための受信アンテナが6基取り付けられている。

サロ181-6(サロ25006)のラジオアンテナ。

 本系列では4両を背中合わせにして連結するため回送運転台側は制御回路用ジャンパ連結器栓受けが両側にある。
 床下にはC2ブレーキ制御装置、700リットル水タンク、80リットル飲料水タンクなどが取り付けられている。



なお、1959年6月1日付車両称号規程の改正により、モハ20→モハ151、モハシ21→モハシ150、クハ26→クハ151、サロ25→サロ151と改番されている。

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